アマゾンのレビューで評判がよかったので読んでみた作品。
作者は弁護士で,小説家デビューが2011年で現在まで50作以上あるという。ということは,ガードナーのように作風的には軽いものだろう,と考えたけど,半分想像通りでした。
とにかく展開がはやく,リーダビリティが高く,するする読んでいける。主人公の女性のバツイチの弁護士のダニエルのキャラクターも今までの悪い言い方をすれば「いい子ちゃん」ではなく,胸の内を表に出すタイプで,それが作品的にもキャラ的にも,長所と短所になっている。わかりやすいテレビの主人公のような感じだ。
僕は,本当に「このようなことが現実にアメリカで起こるのか」と訝しつつ読んでいたら,著者のあとがきで,読者から,内容を称賛しながらも実際の法制度では起こりえないことだよねと連絡が来るといい,そして自分の作品を自ら経験したことを題材にしていると述べているのにやられた気分をもった。僕にとっては,これが本作の本当の「落ち」だったわけだ。
とにかく,昨今のアメリカで起こっている暴動などについて,その根源はどこにあるのかが実感としてわかるので,リーガルサスペンス好きは手に取ってみるといい。
というわけで,☆☆☆★といったところだ。主人公のキャラがよいと前述したが,僕としては主人公の家庭の事情は邪魔だなと思って,読み飛ばしたというのが実際であり,それでも十分に愉しめたよ。
しかし,海外ミステリの書評家はこの作品を勧めないのだろう? 僕が読んでいないだけなのか? このようなリーダビリティをもち,ファンタジーでなく,きちんと社会で働いているキャラクターが出てくる作品こそ,ぞくぞく翻訳してほしい。過激なものだけが面白さではないのだ。