ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2010-01-01から1年間の記事一覧

『とらドラ・スピンオフ! 3 俺の弁当を見てくれ』竹宮ゆゆこ,アスキー・メディアワークス,2010/04

『とらドラ!』の番外編短編集の3冊目。もうこれで終わりですかあ。あまりにも久しぶりの『とらドラ!』で最初は文体に慣れなかったのですが、一旦のめり込めば、面白さ全開でした。個人的には、能登×木原の「ラーメン食いたい透明人間」にやられちまったな…

『心の仕組み――人間関係にどう関わるか〈上〉』スティーブン・ピンカー, 椋田直子訳, NHKブックス,1997→2003

著者のピンカー氏は新聞などの書評の紹介記事から、ウィキペディアで検索したこともあり、以前から気になっていました。とくに脳科学のある禁忌について語っているところが。そのためか、あまり日本では信用されていませんが。 『心の仕組み』は上・中・下巻…

『殺人者の顔』ヘニング・マンケル, 柳沢由実子訳,東京創元社,1991→2001

『タンゴステップ』で作者が気になった。警察小説クルト・ヴァランダー・シリーズを第一作から読むつもり。シリーズが完結しているおり、また文庫なので、おそらく10年後には手に入れることが難しくなっているだろう。今のうちに集めておく方がよいだろう。 …

「ワン・ゼロ」漫画家・佐藤史生さん死去

佐藤史生さんの訃報記事を仕事中に見て、思わず動揺してしまいました。考えてみれば、そのような年齢ではあるのですが、現在は休んでいるだけで、この才能あふれるマンガ家は、数年に一冊ぐらいは読むことができる現役のマンガ家だと思いこんでいたからです…

いまさらのお話

『中央公論』が2010年1月号より小説の連載が始まっていた。こういうオピニオン誌に必要なのかなと思う。これは、団塊世代以上のみを読者対象として考えるという意味なのかな? まあ、いいんだけど、もっと若い人を対象にしたオピニオン誌が欲しいな。 『本…

『ピアノの森 17巻』一色まこと,講談社,2010

相変わらず面白いけど、マンネリしている感じもする。雨宮のラスボスは父親ですか。うーん、どのように乗り越えさせるのでしょう。カイのラスボスはナンなのでしょう? 「手」ではないよね。ピアノの森(17) (モーニングKC)作者: 一色まこと出版社/メーカー: …

『相棒 Season 8』「最終話 神の憂鬱」2010年3月10日

2週間前から交通局に対し、法定速度内でもオービスが反応してしまうというスピードカメラの誤作動の訴えがあった。一方、帝都物産の屋上から、社員の早乙女が飛び降り自殺した。帝都物産は、産業スパイ対策の防犯カメラが多く設置されており、その記録から…

『相棒 Season 8』「第18話 右京、風邪をひく」2010年3月3日

竹林で65歳の西島という男の死体が埋められているのを発見された。現場周辺に西島のものらしき軍手の裏側に油性ペンによる黒い二つの点がつけられていたものが落ちていた。西島には家族も身寄りもなく孤独であり、死因は殴打によるくも膜下出血だったことか…

『ジェリコ街の女』コリン・デクスター,大庭忠男訳,早川書房,1981→1993――探偵と勝負か、作者と勝負か、それが問題だ!

モース主任警部シリーズ第5作めで、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダカー賞受賞。 モースがパーティの席上であったアンという女は魅力的だった。後日、モースはそのアンに会いに行ったが不在だった。そのまた後日、アンが自殺していたことを知ったモースは…

『「日常型心の傷」に悩む人々』丸野俊一, 小田部貴子編,現代のエスプリ no. 511,2010/01

日常型心の傷とは以下の通り、昔からあったと思われるが、現代特有の状況によって生じる心の傷のことらしい。その多くの原因は、人間的つながりの希薄化としている。 小田部(2009)によると、生命の危機に結びつかない精神的暴力・虐待・嫌がらせに悩む人々…

『バクマン。 7巻』大場つぐみ, 小畑健,集英社,2010/03――編集者と最終回

うーん……なんというか、港浦という編集さんに感情移入してしまいます……。彼は編集者として優秀なのかそうではないのか……。どちらかというと、私も服部タイプではなく、港浦タイプなので……。この作品では編集者の特徴をデフォルメしていますけどね……。しかし…

『おかしな二人』井上夢人,講談社,1993→1996――何度でも読むことができる傑作

気分が落ち込んで、鬱っぽくなり、エネルギーを要することが自発的にできなくなったときに読む本がいくつかある。その多くは、例えば『まんが道』『プレイボール』などのマンガであったけど、今回は既読の本棚に並んでいた本書を手にとった。本書は、井上氏…

『“文学少女”と穢名の天使』野村美月,竹岡美穂,ファミ通文庫,2007――耽美的なミステリ

文学少女シリーズ第4作目。相変わらずの事件に巻き込まれた心葉とその謎解きをする(ときどき間違うこともあるけれど)文学少女の物語。本作は、ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』をモチーフに物語が進みます。 遠子は受験勉強のため文芸部を休部宣言す…

『パンドラ抹殺文書』マイケル・バー=ゾウハー,広瀬順弘訳,早川書房,1980→2006――冷戦が生んだ傑作スパイミステリ

マイケル・バー=ゾウハーの第4作目。私は過去に1作は読んでいるはずなのですが、作品名もわからず……。とびきり面白かったという記憶しか残っていません。本書は、書体を大きくした復刊もの、あるいは改訳ものなのでしょうか? ある二重スパイ「パンドラ」…

『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎,新潮文庫,新潮社,2000→2003――真にオリジナルなデビュー作

新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伊坂氏のデビュー作。以前から興味はあったものの、なぜか出会いがなく、これまで未読でした。 主人公は伊藤という若い男。彼は仙台から遠く離れたところにある牡鹿半島の南に位置する荻島という小島へ、見知らぬ男に案内さ…

『疑り屋のトマス』ロバート・リーヴズ, 堀内静子訳,早川書房,1985→1987――減らず口をたたくソフトボイルド大学教授

実は発売当初から書評等で気になっていた作品。たぶん好みが合う書評家が紹介していたんですよね。読むのがまさか23年後になってしまうとは。その理由は翻訳当初以降でほとんど語られることがなかったことと、もう一冊しか出版されていないからですね。とい…

『相棒 Season 8』「第17話 怪しい隣人」2010年2月24日

右京は、9年前に起きた3億円現金輸送車強盗事件の関係者で元警備員の男に、関係品として押収されていたハンカチを返却しに自宅へ行った。一方、その隣の一軒家に配管工事人のつなぎを着た三人組の男たちが、窓ガラスを割って侵入し、住んでいる佐藤夫婦を…

『相棒 Season 8』「第16話 隠されていた顔」

ある日曜日、大学の農学部の倉庫でガス爆発事件が起き、心理学部の曽田准教授の焼死体が見つかった。その爆発の原因は、曽田が倉庫で煙草を吸ったとき、LPガスのボンベから漏れたガスに引火したものだった。その事件のそばを偶然通りかかっていた右京と神戸…

『銀河英雄伝説〈5〉風雲篇』田中芳樹,東京創元社,1985→2007

フェザーン自治領を武力占領した帝国軍の最高司令官ラインハルトは、すべての宇宙を手中におさめようと、同盟軍への侵攻を開始し、まずフェザーン回廊を通過しイゼルローン要塞に向かった。首都はイゼルローン要塞にいるヤンに対し、ヤンの判断で行動して良…

『とらドラ! 3巻』『青い花 5巻』

アニメ放送で知ったマンガ2作。しかし今期は面白いアニメがないなあ。まあ見てはいるのですが……。■『とらドラ! 3巻』竹宮ゆゆこ, 絶叫, アスキー・メディアワークス, 2010/01 1年ぶりの新刊。いったい何時終わるんでしょう? 10年はかかりますねえ。原作通…

『薔薇は死を夢見る』レジナルド・ヒル, 嵯峨静江訳,早川書房,1983→1985

ダルジール警視シリーズ第7作目の作品。昔はヒルの良さがわかりませんでしたが、『闇の淵』から理解できるようになったみたいです。じわじわ流れる日常が少しずつ変化して、ある時に世界がグンニャリしてしまうような感覚を味わうことができ、それが病みつ…

『トーキョー・プリズン』柳広司,角川文庫,2006→2009

舞台は第二次世界大戦後の日本。ニュージーランド人の私立探偵エドワード・フェアヒールドが、スガモプリズンで起こった密室の殺人事件を捜査する物語。といっても、収監されている戦犯でかつ記憶喪失のキジマという男が推理するのだけど。また、キジマの戦…

『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』宮崎隆司,コスミック出版,2010

これは面白かった。こういう分析本を待っていた。一気読みしました。日本代表の7試合をイタリア人監督5名が徹底分析したもの。昨年か一昨年の『Number』でイタリア人の戦術オタクの代表や浦和レッズなどのゲーム分析がやたら面白かったので、本書にも同じ…

『海街diary 3巻 陽のあたる坂道』吉田秋生,小学館,2010/02

吉田秋生氏の新作第3巻です。私は1・2巻とも評しており、とくに2巻のときは最大級の評価をしたのですが、本巻になって、もう「すごい」としか言いようのない作品となっています。ミステリでも萌えものでも、ある種のとんがっている部分がないと面白く感…

『盲目の理髪師』ディクスン・カー, 井上一夫訳,創元推理文庫,1934→1962

ギデオン・フェル博士が探偵役のシリーズ23作中4作目の初期作。私が読んだのは1997年32版のものですが、とにかく字が小さくて読むのが大変でした。読んでも読んでも先へ進まない感じ。ストーリーそのものも何の話をしているのか焦点があっていない感じがして…

『伊藤潤二の猫日記よん&むー』伊藤潤二,講談社,2009/03

ホラーマンガ家伊藤潤二氏が新居を購入して「よん」と「むー」という猫エッセイ。私は伊藤潤二氏の作品の良い読者ではないのですが(一番好きなのは『双一シリーズ』だったりする)、本書はたまたま池袋ジュンク堂で試し読みで購入。動物マンガにもあまり興…

競馬題材に推理小説 ディック・フランシスさん死去

ディック・フランシスが亡くなったとのニュース。残念で哀しいといえば哀しいし、年齢的に大往生ならば良かったと思う。 ディック・フランシスの作品を初めて手にとったのが、高校2年のときで『本命』だった。『本命』の霧の中から馬が駆ける音が響く印象的…

『ハマースミスのうじ虫』ウィリアム・モール, William Mole, 霜島義明訳,東京創元社,1955→2006

植草甚一が責任編集をつとめた翻訳ミステリ叢書「クライム・クラブ」の第1回配本だった作品。長らく評論のみで知られていたけど文庫などで復刊されなかったため、幻の作品といわれていたもの。私が最初に知ったのは、別冊宝島の『ミステリーの友』でどなた…

『相棒 Season 8』「第14話 堕ちた偶像]

ななみという少女が、夜マンションから駐車場に向かう途中に、見知らぬ男に声をかけられ、走って逃げたところ自転車にはねられ腕を骨折し入院した。少女が言うには、追いかけてきた男は政治家の江嶋代議士だという。 興味をもった右京と神戸は、そのマンショ…