ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2017-01-01から1年間の記事一覧

『刑事くずれ』タッカー・コウ,村上博基訳,ハヤカワミステリ1181,1966,1972ーー日本人的なハードボイルドミステリだけど

D・E・ウェストレイクの別名義で書かれた元刑事のハードボイルドミステリ。あらすじだけ見ますと、仕事でしくじった刑事が良心の呵責を追って塀づくりの仕事をして自らを罰するように暮らしているところへ、その元刑事のキャリアを知った者がトラブルを解決…

『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵,サンマーク出版,2010ーーミニマリズムへの橋渡し

①私は片付けができないので、どのようにしたらよいのか、②なぜ本書がベストセラーになったか、の2つの興味で今更ながら手に取りました。 まず、驚いたのが、片付けの本にもかかわらず、図や写真がまったくなく、文字しかないこと。これでどうしたベストセラ…

『キングを探せ』法月綸太郎,講談社文庫,2011,2015

本書はランキングなどで評価を受けた謎解きミステリですが、どうも私には乗ることができませんでした。 こういっては読者として敗北なんですけど、殺人というものは、ほとんどの人にとって初めてで、その初めてのことを本書のようにやり遂げるのこと、また失…

『悲しみのイレーヌ』ピエール・ルメートル,橘明美訳,文春文庫,2006,2015――いかにもなミステリオタクのデビュー作

『その女アレックス』で評判を得たルメートルのデビュー作。『死のドレスを花婿に』が破たんしていたので、もうルメートルは読まなくてよいかなと思っていたら、その後に翻訳されいる作品の評判が良いことから、とりあえず順番に進めるということで手に取り…

『ぼくらの仮説が世界をつくる』佐渡島庸平,ダイヤモンド社,2015ーー出版業界の未来と新しい編集者の役割

作者は『モーニング』で『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』などを担当した編集者で、その彼の編集者論。今の時代には編集者の役割がプロデューサーになったと高らかに宣言しています。その考えはとくに新しいものではありませんが、なかなかできないものです。 書籍…

『メグレと無愛想(マルグラシウ)な刑事』ジョルジュ・シムノン,新庄嘉章訳,ハヤカワ・ミステリ 370,1957,1984

メグレ警部シリーズの「メグレと不愛想な刑事」「児童聖歌隊員の証言」「世界一ねばった客」「誰も哀れな男を殺しはしない」の4つの短編が収録されている短編集。短くて読みやすい。派手なトリックはないものの、ちょっとした意外性はあります。しかし、事件…

『黒い迷宮ールーシー・ブラックマン事件15年目の真実』リチャード・ロイド・パリー,濱野大道訳,早川書房,2011,2015――一種の怒りと恐怖を抱くことができる傑作

ホステスのイギリスの若い女性を監禁・殺人を行った事件を追ったノンフィクション。ものすごくリーダビリティが高く、描写が理性的で偏ることがなく、一種の怒りと恐怖を抱くことができる傑作。 ニュースなどで犯人が報道されたが、詳しい説明はなく、どのよ…

『七つの会議』池井戸潤,集英社文庫,集英社,2012,2016ーーサラリーマンのジレンマを会議で示す

池井戸氏の中堅メーカー企業を舞台にしたクライムノベル。でも読んだ後でないとクライムノベルとわからない。最初にソフトカバーで出版されて、書店にたくさん並んでいたとき、タイトルが「会議」だし、半澤直樹シリーズがテレビで視聴率をとっていたから、…

『伝える力』池上彰,PHPビジネス新書,2007ーー130刷を超えるベストセラー

100万部を超えたベストセラーということで購入しました。基本的に勉強になりましたが、ちょっとあっさりし過ぎかな。面白かったのは、目次に「章レベル」があり、そのあとに13.(1)映画や連載記事に学”つかみ方”などと表記されて、それぞれ通しナンバーがつ…

『その雪と血を』 ジョー・ネスボ,鈴木恵訳,ハヤカワ・ミステリ 1912,2015,2016

昨年に翻訳されて書評で評判が良かった作品。巻末の作品リストによると、この作者は17作品出版しており、そのなかで6作品が翻訳されているのですが、主に集英社文庫だったためか、私は知りませんでした。書評などを読んでも、ピンと引っ掛かるものがなかった…