ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ (著),友廣 純 (訳) ,早川書房,2018,2020ーーミステリではなくロマンス小説

 偶然,『透明人間は密室に潜む』と同じ 『ハヤカワミステリマガジン ミステリが読みたい! 2021年度版』で3位,『このミステリーがすごい!2021年度版』で2位の作品で,春先から書評で好評であり,かなり期待したましたが,勝手に失望しました。

 というのは,これはミステリではないんですよ。ロマンス小説,女性向け小説,少女マンガの類するもので,主人公の存在が受け入れられない。もう少し説得力をもった展開にしてほしかった。

 まあ最初の湿地に暮らす一人の少女の物語であることは,アメリカの伝統小説の1つで,田舎の少年少女の成長譚は,ミステリではキングやマキャモンも書いていて,面白そうと期待したのですが,中途からなんじゃこりゃ展開ですよ。ちょっと主人公が天才過ぎますよね。

 この作品が評価されて,同じ女性作家で,同じような舞台の『果てしなき輝きの果てに』が全く評価されなかったのは,納得できませんねえ。『果てしなき』のほうがミステリ的趣向が素晴らしかった。それにしても,なんで『果てしなき』は受けなかったのだろう。あの周りの人々は全部を知っていて,自分だけが全く知らなかったというショック感情は一部の人にしか経験しない感覚なのであろうか。

 ラストの展開も実をいうと,そうだったかなと予想どおりでしたし,その伏線ははってあったかなと訝しく思ったりして,☆☆☆★というところです。 

 しかし,2連発で全く趣向が異なるとはいえ,自分には合わない作品を読んでしまったわけで,人生の残り時間を考えると無駄にしてしまった感が強くて,めちゃめちゃ落ち込みますねえ。

 あと動物や植物をカタカナ表記にしているのは何でなんでしょうかねえ。早川書房はいつもそうですよね。犬や猫は漢字でもいいと思うのですが。医学用語も専門書で調べませんしね。そういう細部に違和感を残してしまうのは得策ではないと思うんですよね。

ザリガニの鳴くところ

ザリガニの鳴くところ