ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『殺しへのライン』アンソニー・ホロヴィッツ、山田蘭、創元推理文庫、2021、2022ーーリゾート地での殺人

 ホーソーン&ホロヴィッツシリーズの第4作目の作品。読むのに時間がかかってしまいました。どうも読書時間を確保するのが難しい。

 ホーソーンホロヴィッツは、新作の出版のプロモーションとして、イギリスとフランスの間にあるオルダニー島で行われる文芸フェスに招かれ参加した。その島の館で文芸フェスの後援をしていたオンラインカジノの経営者が右腕以外の全身を椅子に縛り付けられて喉を金物で刺されて殺された。一体だれが犯人なのか?

 出版までプロモーションの時間をとって宣伝しているイギリスの出版事情が語られていて興味深い。つまりそれだけ金銭的余裕があるということだ。文芸フェスを本土から船で40分かかるリゾート島で行うのも不思議だ。それでは人はなかなか集まらないだろうに。いまネットで新作アニメの発表をリアルタイムで流しているけど、それと同じようなものなのか? 

 解説でも書かれているけれど、このリゾート地でのイベントの殺人というのがクリスティっぽい。クリスティだったら、イベントの舞台の上で行うだろうけど。冒頭からの流れが、最近アマゾンプライムで「鏡は横にひび割れて」を見ていたから、少し登場人物の気分が浮き上がっているところなど雰囲気が似ている。

 犯人そのものも、まったくわかりませんでした。最後になぞ解きを披露してくれるのだけど、それで、あの退屈なシーン一つ一つに意味があったことがわかります。それに対して、見逃したことが悔しい人には評価が高いミステリなんでしょう。僕としては、あまり納得できなかったので、☆☆☆★といったところです。